ペットを飼うとなると、どうしても直面する問題が「避妊」や「去勢」の問題です。現在、およそ7割のわんちゃん、ネコちゃんが受けているという避妊ですが、どういった目的で行うのでしょうか。

去勢や避妊の大きな目的は、病気の予防です。子宮蓄膿症や乳腺腫瘍、睾丸腫瘍などの様々な病気の発生を抑えられるほか、性ホルモンなどによって病気が悪化する可能性を断つことができるため、生後半年前後のできるだけ早い段階で受けることが推奨されています。

また、メスのワンちゃんの場合には発情時に陰部から出血したり、他のオス犬を興奮させたりする恐れがあるため、公共の場所に連れていく際などには、避妊をしておくことで様々な問題を回避することができます。

猫の場合は、交尾排卵動物ですので、かなり高い確率で交尾をしたら妊娠してしまいます。たった数時間外に脱走しただけで妊娠して帰ってきた子も居るほどです。

自然のままに過ごさせたい、健康な体にメスをいれるのは可哀そうだと言われる方もいらっしゃいますが、犬や猫はヒトと暮らしている段階ですでに「自然のまま」に生きていくことは不可能です。

発情によって引き起こされるストレス、病気のリスク、複合的に考えて実施していただければと思います。

①特有の病気を予防できる

去勢・避妊を行うことで、オスメス特有の病気を防ぐことができます。メスであれば乳がん（乳腺腫瘍）や子宮内膜炎、子宮蓄膿症の発生をおさえることができます。特に乳腺腫瘍に関しては、初回発情前に手術を実施すれば１００％近い確率で予防が可能です。数回発情が来てしまうと発生率はなんと4匹に1匹です。

メス特有の病気には命に関わるものが多いため、防げるものは予防してあげたいですね。

また、オスに関しては精巣腫瘍や前立腺疾患、肛門周囲の腫瘍などの発生を抑えることができます。いずれも高齢になって命に関わったり大手術を必要とする病気ばかりです。このような病気で苦しむ子を診るたびに、早く手術していれば・・・と悔やまれてなりません。

②発情期のストレス軽減（メスの場合）

去勢や避妊によって発情期がなくなるため、性的なストレスが軽減されます。また、発情後に乳腺が腫れたり巣作り行動してしまうことや体調変化も抑制できるため、穏やかに過ごしてもらうことができます。

③問題行動を抑えられる

オス特有のマーキングやマウンティング、遠吠え、ケンカなどの行動を減らすことができます。

オスの本能である尿マーキングなどの改善も期待できることから、去勢手術を行っておく価値はあると言えるでしょう。

ただし、これらは100%抑えられるわけではありませんので、効果が少ない可能性があることも覚えておいてください。

①全身麻酔をしなければならない

去勢・避妊手術のデメリットの一つは、全身麻酔による手術が必要ということです。もちろん、術前検査や術中モニター、術後の経過観察に努め、なるべくリスクを減らす努力は行っています。しかし、全身麻酔には少なからずリスクはつきものです。恐れすぎることはありませんが、リスクがあるという認識は必要です。

②繁殖できなくなる

生殖機能を取り除くので、子どもを産むことはできなくなります。また、多いケースでは無いと思いますが、ドッグショーは繁殖する犬が評価されるため、去勢・避妊をしてしまうと出場権がなくなります。

③手術後のストレス

去勢・避妊手術の後は、慣れない環境や術部の痛みでストレスを感じることがあります。カラーや術後服もストレスになりえます。痛み止めや飼主さんのケアも術後には必要になることがあります。

④感染リスク

手術や術後のストレスなどをきっかけとして、細菌やウイルスに感染してしまう恐れがあります。病院では衛生的な手術や適切な薬剤使用を心がけていますが、ご家庭でも環境整備やストレス軽減にこころがけましょう。

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