ネコちゃんの平均寿命は年々伸び続け、現在は15歳を超える長寿猫も少なくありません。しかし、高齢になればなるほど、悪性腫瘍（がん）のリスクも高まります。
ネコちゃんに多いガンの種類や早期発見のための知識を身につけて、愛猫の健康を守りましょう。

良性腫瘍と悪性腫瘍の違い

正常な細胞は体の状態に応じて、増えたり、増えるのをやめたりします。腫瘍とは、状態にかかわらず異常に増殖してできた細胞のかたまりのこと。進行スピードが比較的遅く、できた場所以外に転移することがない腫瘍を「良性腫瘍」。増殖スピードが早く、別の場所に転移する腫瘍を「悪性腫瘍」といいます。

ガンとは、この「悪性腫瘍」を指し、臓器や生命に重大な影響を与えます。悪性腫瘍は血液やリンパ液を介して、離れた場所の臓器にも転移が可能なため、早急な治療が必要です。

猫に多いガンの種類

悪性腫瘍の比率はワンちゃんが59.6％、ネコちゃんは87.7％。ネコちゃんの腫瘍発症率はワンちゃんより少ないですが、悪性比率が高いので注意が必要です。
「口腔腫瘍」「乳腺腫瘍」「皮膚腫瘍」「リンパ腫」が多くみられますが、消化器系や筋骨格系、神経系、血液リンパ系など、すべての器官で発症する可能性があります。

口腔腫瘍（扁平上皮ガン）

扁平（へんぺい）上皮がんは、口腔内や耳、まぶた、鼻腔など、色素が薄い皮膚に発症しやすい悪性腫瘍。ネコちゃんの場合は、歯肉や唇、扁桃、舌など、主に口腔内で発症することが多く、その80％が悪性です。

転移することは滅多にありませんが、大きくなるスピードが早く、早期発見での外科手術が完治の要となります。外科手術ができない部位に腫瘍がある、進行が早く骨にまで浸潤しているなど、ステージが進むと根治は困難になります。

【早期発見ポイント！】

口の中の腫瘍とあって、発見が遅れがちのガンです。健康診断で定期的な口腔のチェックをしていれば、早期発見の確率は高まります。また、口を気にする、ドライフードを食べなくなる、ヨダレに血が混じっているなど、口腔の異変に気づいたら、いち早く動物病院を受診しましょう。

乳腺腫瘍（乳ガン）

避妊手術をしていないメスのネコちゃんに見られる乳腺の腫瘍です。悪性比率は80〜90％とワンちゃんに比べても非常に高く、リンパ節や肺に転移しやすいので、注意が必要です。

【早期発見ポイント！】

乳腺腫瘍は、初回発情前の避妊手術で91％、生後7〜12ヶ月で86％、発症リスクが低下します。初回発情前の避妊手術が最大の予防策と言えるでしょう。

肥満細胞腫

肥満細胞とは免疫細胞の一種です。猫ちゃんの場合、皮膚型、脾臓（ひぞう）型、消化器型の3つに分かれ、皮膚型は発見もしやすく、良性の動きをするものも多いのが特徴です。発見しづらい脾臓（ひぞう）型、消化器型は悪性率が高く、転移しやすいため、完治が難しくなります。

【早期発見ポイント！】

リンパ腫

リンパ球は免疫システムの中で重要な役割を果たす白血球の一種。リンパ腫は、そのリンパ球が腫瘍化する血液のガンです。体表のリンパ節が肥大化する多中心型、胸腔内のリンパ節や胸腺が腫瘍化する縦隔型、消化器型など、全身の至るところで発症する可能性があります。根治は難しく、治療は抗がん剤などの化学療法に加え、緩和治療といった選択肢もあります。

【早期発見ポイント！】

発生メカニズムが解明されていないため、予防は困難です。ネコちゃんの場合、猫白血病ウイルスや猫エイズウイルスの感染がリンパ腫の発症率を高めることがわかっているため、感染防止のワクチン接種は有効な手段です。定期的な健康診断やワクチン接種を心がけてください。

定期的な健康診断で早期発見

ネコちゃんがガンにかかってしまった場合、完治ができる確率を上げるためには、人間と同様に早期発見・早期治療が最良の策です。日頃から愛猫の様子を観察し、異常をいち早く察知できるようにしましょう。

サインとしては、食欲不振や元気がない、下痢や嘔吐、血便や血尿、咳や鼻水など。特に体重の減少が見られたら、できるだけ早く動物病院を受診してください。

悪性腫瘍は高齢になるごとに発症リスクが高まるため、7歳を過ぎたら定期的な健康診断は必ず年2回のペースで受診しましょう。当院では「シニアのためのがん健診コース」を用意しています。早期発見の力強いツールとして、ぜひご活用ください。

アニモ動物クリニック