コラム
今さら聞けない猫エイズの常識
統計によると、日本のネコちゃんの10%が猫エイズに罹患しているそうです。
身近な病気にも関わらず、エイズという怖い名前にあおられて、どんな病気か知らないなんてことはありませんか?
身近な病気だからこそ、正確な知識がネコちゃんを守ることになります。
猫エイズはどんな病気?、感染予防の方法や治療法はある?、多頭飼いの注意点など、ポイントごとに解説していきます。
猫エイズのウイルスとは?
猫エイズは専門的な用語では猫免疫不全ウイルスといい、様々な細菌やカビ、ウイルスから体を守る免疫機能を壊してしまう感染症です。
人に感染するHIVウイルスの近縁種ですが、人に感染することは決してありません。
また感染から発症までのスパンが非常に長い病気。実は罹患してしまっても、10年以上発症せずに寿命をまっとうするネコちゃんもいます。
実は、このウイルスの感染力はとても弱く、飛沫感染や空気感染はしません。ウイルスは唾液や血液、尿に含まれているので、感染経路はおもにネコちゃん同士の激しいケンカ。
噛み傷があったりすると、そこから感染していくので、必ず検査をしておきましょう。
検査そのものは10分程度でできて、クリニック内で結果が出せる簡便なものです。
感染予防のポイント
外に出かけるネコちゃんに比べると、完全室内飼育では圧倒的に猫エイズの感染が少ないことがわかっています。
それは猫エイズが噛んだり引っ掻いたりといった出血をともなうケンカを契機に感染することと無関係ではありません。
また避妊・去勢手術も有効です。感染経路となる交尾がなくなりますし、男の子も性格がおだやかになりケンカの回数が減るからです。
発症までのプロセス
猫エイズに感染してから数カ月後までを急性期と言います。この時期のおもな症状は口内炎。
喉の奥や歯肉が炎症を起こし、痛みで食欲が減ったり、口臭や大量のよだれが出ることも。他に熱が出たり、鼻がぐずぐずしたり、咳や下痢など猫風邪のような症状が見られます。
急性期の後は、無徴候キャリアー期。その名の通り、なんの兆候も見られずネコちゃんは元気に過ごすことができます。
この期間は数ヶ月から数年、ネコちゃんによっては10年以上経っても発症に至らないことも。
次の段階が免疫系を担うリンパ節が腫れる全身性リンパ節膨大期。この段階を経て、免疫不全の病態に入っていきます。
免疫が機能しなくなり、軽いはずの感染症が重篤化したり、悪性腫瘍が発生したり、ひどい貧血になったり、食欲が落ちて体重が減っていきます。
猫エイズの治療法は?
現在は根本的に治療する方法がない、というのが厳しい現実。感染してしまったら、いかに症状を和らげるかが課題となります。
しかし、猫エイズは無徴候キャリアー期が数ヶ月から10年以上と幅があるのも特徴です。
ストレスが低いと発症しにくいという研究もあり、ストレスがない飼育環境を整えることが、発症を抑える予防になるかもしれません。
多頭飼いの場合の注意点
無徴候期といえどウイルスは身体から排出され続けています。同居するネコちゃんがいる場合には、部屋を別にした方がいいでしょう。
全身性リンパ節膨大期や免疫不全といった状態になれば、ウイルス濃度が高まって感染の可能性がより高まりますし、安静が必要な感染ネコちゃんの看病という観点からも隔離が必要となってきます。
猫エイズのウイルスはすごく弱く、ご家庭で使っている洗剤などで感染力を失わせることができます。
感染ネコちゃんの看病の後は必ず手洗いをするようにしてください。フードやお水のボウル、トイレも別にすることは鉄則です。
さいごに
当院ではご家庭の状況に応じて、どう隔離するのがいいかなど、猫エイズキャリアの飼育アドバイスも行っています。
しかし、感染ネコちゃんだけの部屋を用意できるご家庭ばかりではないでしょう。基本的には、完全室内飼いを徹底して、感染を防ぐことが何よりも大切になります。
アニモ動物クリニック
「生涯を通じて、動物たちとご家族に寄り添う病院」を目指し、治療はもとより、健康診断や疾患予防、ダイエットやリハビリ、老後の介護などトータルでサポート。去勢・避妊手術も事前診察から経過観察まで、体の状態を丁寧に確認しながらケアいたします。
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